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『スリー・オヴ・ハーツ』 ★★★  この設定で、なんと!後味のいい佳篇
ウイリアム・ボールドウィン/シェリリン・フェン

 たまたまTVで観たのですが、決して派手ではないし、大作でもないけれど(僕の好きなフレーズ??)なかなか後味がいい佳篇だったので、ぜひ紹介させて下さい。
 ただし、笑うような映画じゃないです。恋人の女性(ツイン・ピークスが懐かしいシェリリン・フェン)に別れを切り出された女性(ゲイのカップルなんです)が、彼女を連れていくつもりだった妹の結婚式にエスコート・サーヴィスから男を呼んだところ、事情を知った彼、「別れたいのは男とつきあってみたいからじゃないか、男といちどつきあって捨てられたら君のところに戻ってくる!」とミョーなDr. Loveぶりを発揮したために、その男の役を押しつけられてしまうのですが、けっきょく捨てるどころかほんとに恋をして…というお話。フツーのお話ですよね、ある意味では、すごく。この男、つまりジゴロ役ですが、これをやるのがボールドウィン弟(この兄弟、意外とこのページでは評判いいかも)。映画自体も、いきなり彼のテレフォンセックスの場面からはじまるのですが、any woman, any time, any place, guaranteedとかなんとかジゴロぶりを発揮して、接近したシェリリン・フェンに「あなたはどういうつもりなの? 料理はシェフ級だし、見た目はムーヴィ・スターみたいだし」とかいわれるとこはちょっと笑ったかな。
 でもなにより面白いのはこの設定で…ということなんです。ゲイといえば男のゲイふたりに精神的に未成熟な女がひとりくっついて、とか、ヒロインにゲイの友達がいていつも心の支えになってくれて、という映画は最近100編観た気がしますし、そういう現代の甘ったれた女性の心にジャスト・フィット、彼女たちの都合のいいようにだけあつらえられた道具でしかない宦官としてのゲイは、最初はイイトコつくなぁ、さすがmake belive!とか思ったけれど、こうも連発されると、フィクションを現実が模倣するというか、ただのファンタジーではすまされないような予感もして恐い気さえします。けれどこの作品では女性ふたりがゲイです。そしてそこへ加わる男はジゴロ、男娼です。どうしてもさらにひねったような、特殊な設定一発で引っぱろうとするような作品、ましてやいい後味なんて残すわけがない、と思えたし、だから僕もTVで流れるまで観なかったわけです。なのに、それがちゃんと後味がいいのです!
 難しいことも、変わったこともいっていません。この設定で、描かれている感情は、すごくナチュラルなんです。大きなことはなにもいっていませんが、穏やかに、でもちゃんと人間を信じています。
 シェリリン・フェン演じる彼女はまじめで、ひたむきで、だからこそ、最後彼女がタクシーに乗る場面も暖かい気持ちになります。ふられたほうの彼女も、一時はストーカーと化していますが(笑)ほんとうに心根のいい人だというのがよく伝わってきます。そのゲイの彼女が、シェリリン・フェンにほんとに恋してしまったジゴロと最後にしっかりと心が通じ合う場面も暖かいです。ほんとうの、mutualな友情、といってもいいでしょう。ジゴロの彼の立ち直り、というのも描かれているのですが、その理由や成り行きはきわめて類型的なものなのに、ちっとも拵えたかんじがせず、自然で心に届きます。
 けっきょくこの映画を僕がいいと思うのは、一見いまでは通俗と化してしまったあざとい設定を、さらに姑息に男女逆転させただけ、となってしまったかもしれないこの作品の中で、凡百の、ゲイの男性がヒロインを助けるためだけの内面のない便利な道具としてのみ存在する映画等とはまったくちがい、この三人が、三人ともちゃんと生きた人物であり、しかも本質的にいい人たちであり、その上それぞれがしっかりと持っているそれぞれの悩みを、それぞれにしっかりと解決していく、という姿が、きちんとぜんぶ、それもほんとうに自然に描かれているからです。ファンタジー、現実的でない甘い夢かもしれませんが、それでもいいと思うのです。「こんなの現実じゃないや」ということは簡単です。でも現実を正確に描くだけなら、今日、そのことにどれだけ芸術作品としての意味があるでしょう?? そんなことはジャーナリズムに任せたらいい、と僕は思うのです。
 僕はゲイのお話については興味がありませんが(笑)ジゴロや娼婦のお話は、もし書けるものなら書いてみたいといつも思うのですが、ジゴロをこんなふうに優しく、暖かく描けたらいいですねぇ! ほんとに派手な映画ではありませんが、機会があれば、TV放送ででもいちど観てみて下さい。

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