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『恋愛小説家』   残念な1作
ジャック・ニコルスン/ヘレン・ハント

 タイトルからいきなり完全に僕と同業者(?)の映画だけに、これは観るしかないでしょう! と期待して観たのですが…。感想は「うーん…」というものでした。
 で、なんで「うーん…」なんだろう、と考えてみたんですね。ゲイの画家もいい人だし(僕はここではいちばん好きかも)ヒロインもチャーミング。でも、肝心の主人公が「うーん…」なのです。それはなぜか、といいますと…。
 彼はすごく嫌なやつなのに、女のひとの心をつかむ素的な恋愛小説を書く小説家、なんですよね? でも、それはなぜ?
 1. たまたま。そういう技術を持ってるだけ。
 2. 彼自身は嫌なやつだけど、いったんペンを持つと、彼自身も気づいていない彼の最良の面が表れるから。
 2.であれば、彼はほんとうに素晴らしい作品を書く作家、素晴らしい作家でしょう。小説を書くことによってのみ救われる、生来の小説家です。でも、1.であれば、彼は下らない作家だし、彼の作品も下らない。読者は騙されているだけだし、厳しくいえばばか。賭けてもいいけど、彼が死んで1年もたてば、だれも彼の作品は読まなくなるでしょう。小説って、そういうものなんです。で、もちろん彼は2.だと思いたいんだけど(じゃなきゃほんとに下らない映画になるから)どうしても1.だとしか思えないんですよ、この映画からでは。
 なぜそうなるかといえば、たとえば、この作品には『彼にとって小説を書くということはどういうことなのか』が1秒も描かれていないからです。たとえば、ひとりでいいから観客の信頼できる登場人物をだして(画家でもいいです)「僕は君の作品は好きだよ。どうして君は小説でできることが人生でできないんだい?」とでもいわせて、そこで主人公のちょっとした反応を描くくらいの場面さえないのでしょう。最後のゲイの画家による説得の場面なんて、主人公の屈折がいち度も描かれてないただそれだけのために、単に主人公がばかに見えるだけです。(? 犬がなつくヒトに悪いヒトはいないだろう、って? うーん、弱い、弱い)
 他にもヒロインと病気のこどもの関係とか、黒人の画商はすごくおいしい役なのにこれはミスキャストだし(彼自身はいいけど、この役には!)、なかではよく描かれているんだけどゲイの画家のエピソード(モデルのコとの会話や絶縁中の親との関係など)もみんなそうだし、それに最後のハッピーエンディングとこの画家の再生が有機的に関係しないし…。ナット・コールの「センチメンタル・リーズン」も、あんま効いてないよね? とにかく、もうひとつ食い足りない、勿体ないと思える部分をあげていけばキリがありません。
 だんだんこの映画、編集の段階で、重要なフッテージががんがん捨てられたんじゃないの? とさえ思えてきます。キャスティングも着眼点もセッティングもおもしろいだけに、とても勿体ない1作でした。残念ながら、このページでは★は0です。ただひとつ、彼の名誉のために付言しておくと――犬はよくがんばった。偉い!

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