『ミラノの犬、バルセローナの猫』刊行に寄せて/平中悠一(WorldClubメールリリースより)

 こんにちは! ごぶさたしておりますが、いかがお過ごしでしょうか。平中悠一です。
 新しいエッセイ集『ミラノの犬、バルセローナの猫』がようやく発売されました!
『ギンガム・チェック』『シンプルな真実』以来の、3冊目のエッセイ集、通算13冊目の単行本になります。

 詳しい内容や、この本の成立についてはページのほうにも書き込みをしましたので、よろしければぜひご覧下さい。
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 以前にも申しましたが、エッセイには、僕がおそらく自分の小説というフォームのなかには今後とも盛り込むことのできないかもしれない、さまざまなアイディアが含まれています。
 そこで、僕の小説がピンとこないという方にもあるいは楽しく読んでいただける、というのがエッセイで、僕の小説がとても性に合う、という人には、読めばさらに小説の面白さも増すのがエッセイではないか、と思います。
 小説家のエッセイ集、といえば、ともすれば雑文の寄せ集め、というイメージになるかもしれませんが、僕の場合は小説をまとめるのと同じ自分の手法で、ひとつの本の世界として、今回であれば『ミラノの犬、バルセローナの猫』という世界にまとめ上げてあります。そういう意味では、通読して、小説と同じように読む楽しみ方もできる1冊だと思います。

 またwebサイトでは、今回初の試みとして、この本の収録全作品について僕自身によるライナーノーツも掲載中です。「どうしてこんな原稿を書いたんだ?」「この原稿はピンとこないぞ」というものがもしあれば、そちらも参照していただくと、僕の腹づもり(笑)もわかり、解せない部分も氷解、となるかもしれません。
 http://www.yuichihiranaka.com/lib/

 旅をモチーフに、読書、文学や哲学から、ファッション、ポップ音楽、女のコまで、自分の愛着のあるものをだいじに、同じ目の高さで捉える、というのが僕の気持ちにも合い、基本にしている部分です。今回の本も、そういうものになっていると思います。
 それはたとえばハイブロウなものの虚飾を剥がし親しみ易いところに引きずり下ろす!ということでも、逆にサブカルチャーといわれるものを、ハイブロウな観点で捉えなおして持ち上げる、ということでもなく(そういうものは巷にあふれかえっていることですし!)
それがどんなものであれ、僕がとてもいいと思うものを、その「いいものである」というプラスの共通から、同じようにただ単に「いいもの」として捉える、ということなのだと思います。

 リラックスした楽しいエッセイを基調に、僕の、いわば「決然たる不決断」とでもいうようなスタンスも、ところどころしっかり織り込んでおきました。
 政治に限らず経済、文化、風俗を含めたいろいろな面で、昨今、この国の全体主義化に対して恐怖感を感じています。僕のような80年代仕込みのgenuineなノンポリをして(笑)わりに明確にリベラルな立場を選択するまでに追い込むほどの状況が、いまこの国には生まれつつあるように思います。そのあたりの僕の悪戦苦闘ぶりも、楽しく読んでいただければ、と思います。

 もちろん堅苦しい本ではなく、装幀も軽快なフランス装となっています。
 今回僕の長年に渡るcolleagueであり、ヌナである( ; イラストレーターの仲世朝子さんに無理にお願いし、装幀全体を担当していただきました。彼女の装幀デビュー作、でもあります。
 デビュー作といえば、ホームページのほうではみなさんにお伺いしたことなのですが、僕自身がどうしてもひとつだけ自分の本でいちばん好きな装幀を選べ、といわれれば、やはりデビュー作『“She's Rain”』ということになると思います。
 今回の『ミラノの犬、バルセローナの猫』は、その『“She's Rain”』にも負けず劣らず、おしゃれで可愛くて、斬新で懐かしい本になったと思います。
 水色、というか、『“She's Rain”』と同じミント・グリーンのもっと淡いもの、というか、一口にはいえない微妙な色なのですが、たいへん美しい本になっています。どうぞこの装幀だけでも、手にとってご覧いただきたい、と思います。

 冬のいちばん寒い時期を過ぎ、春が近づいています。
 この冬から春の時期にかけての季節、僕はやはり毎年、初めて本を出した時のこと、“She's Rain”の時のことを思い出します。
 久しぶりにこの時期にまた本を出すことができました。
 この1冊が、春風とともに、軽やかにみなさまのお手元に届きますように。
 今回も、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 le vingt-neuf fevrier 2004  平中悠一

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